中医学で産後うつ・産後の体調不良を予防するための心身のケアと漢方薬
出産後は慣れない育児のストレスと、夜中の授乳や夜泣きで睡眠不足の毎日。
人生で初めて自分でコントロールできないことに振り回されるという経験をするのではないでしょうか。
赤ちゃんが寝てくれない、おっぱいを飲んでくれない、このやり方でいいのかなど、
1日中赤ちゃんと向き合う日々に精神的にまいってしまい、疲労困憊してしまうお母さんも多いと思います。
妊娠中は胎児に栄養を持っていかれ、出産で出血し、産後は眠るべき時間にしっかりと眠ることができないお母さんは、慢性的に血液不足になっています。
血液が不足すると心身の「気」も不足してきます。心身の「気・血」が不足したその分、休息と栄養で補われてい ないと、ついにはメンタルにまで及んでくるのです。
心身の不調の理由を知り、予防に努めれば「産後うつ」https://www.jaog.or.jp/qa/confinement/jyosei200311/をはじめ、様々な体調不良を軽減することができるのです。
その知識を今から深めていきましょう。
目次
- ○ 出産後の1か月
- ・産後の心の状態と産後うつの予防
- ○ 産後の便秘
- ○ 母乳のトラブル
- ○ 上手に断乳・卒乳するには
出産後の1か月
長時間の陣痛を経て、出産後の体は疲労困憊。
最初に何よりも休養が必要です。
体の回復として「悪露」はできるだけきれいに出し切りましょう。大抵は1週間くらいで量も少なくなり、徐々におさまります。
なかなかひかない場合はだらだらと1か月くらい続くこともありますが、体の力不足からくる血行不良です。
身体を休めることに加えて、冷やさないよう気をつけましょう。
悪露をきれいに取り除く助けになる漢方を使うのも良いです。よく使う漢方薬は芎帰調血湯第一加減です。
また、入院中は体を休めても、目を休めることを忘れている人が多いのではないでしょうか。
出産で出血し肝臓の血液の蓄えが減っているところに目を使っては、さらに肝臓の貯蔵血が消耗されます。
そのまま退院して育児が始まると、さらに血液が消耗され、「気」も消耗されます。
体の疲れとともに目も疲労しやすくなり、かすみ目や視力の低下につながることもあります。
入院中も退院後も体とともに目にも気を配って、スマホや活字を見ることは最低限にしましょう。
次に栄養です。良い母乳は良い食事からです。
お母さんのとる栄養がそのまま母乳になるので、添加物に気をつけて食べることが大事です。
母乳をあげているときは、血液を作るもとになるような食材を多めに食べましょう。
産後の体調不良は二人目不妊の温床ともなりますので、早めに回復させましょう。
ポイント
・出産後は血液不足
・目の使い過ぎは血液を消耗する
・休めるときにしっかり休んでおく
・良い母乳のために、食事は妊娠中と同じくタンパク質・色の濃い野菜をしっかりとる
・悪露を出し切ってきれいな子宮環境にしておく(産後にすぐ飲める漢方で悪露は早めに消退し
ます)
・心身ともに疲れたら「当帰」や「竜眼肉」「大棗」など「血」を補うものが入った漢方を使う
・目の疲労には「クコシ・クコジュース」がおすすめ
産後の心の状態と産後うつの予防
心の不調は疲労の蓄積で気血不足が「心」に及んだ状態です。
休む時間もなく赤ちゃんのお世話が続く毎日なので体の消耗が激しくなります。
食事はいつもより栄養価の高いものを意識してとらないと、体も心も悲鳴を上げます。
胃腸が弱く、食事の量が少ない人は胃腸を元気にする漢方を飲みながら、しっかり食べるようにすることが大事です。健胃顆粒という漢方薬がお勧めです。
すでに、不安感や落ち込みなどが出ている時には、心を安定させながら身体を元気にする漢方薬を服用すると落ち着きます。心脾顆粒という漢方薬をよく使います。この漢方薬は睡眠の質が悪い方にもよく使われます。
ストレスでイライラや怒りっぽくなっているときは気の巡りをよくする逍遥顆粒を使います。
ポイント
・食事の量が少ない人は健胃顆粒で食欲アップ
・心の安定には心脾顆粒
・ストレスでイライラの時は逍遥顆粒
産後の便秘
出産で血液や水分が排出して、腸はカラカラ状態になっています。
今まで経験したことのない肛門の状態になることもあります。
便がカチカチででにくく、肛門が切れ出血することもあります。
産後は母体の栄養補給と、水分補給をしっかりして、便秘にならないよう気をつけましょう。
授乳中は、なるべく便秘薬を使わないほうが良いので、腸を潤し、通じやすい食材を意識してとりましょう。
例えばプルーンやナツメ、など「血」を補うのに効果的な食材をおやつとしてまめにとったり、ハチミツやオリゴ糖をとるなどして工夫しましょう。
ポイント
・産後は便が硬くなりやすい
・血と水を補うことが大事
・プルーン、ナツメ、ハチミツ、オリゴ糖などで血を補いながら腸内環境をよくする食材を重点的にとりましょう。
・食事で改善しないときは、腸を潤す生薬の柏子仁(はくしにん)がお勧め
母乳のトラブル
母乳に関するトラブルは、
第一に乳腺がつまって熱を持ち痛い。
乳腺のつまりは産後のストレスで気血の巡りが悪くなって乳汁の通りが滞った状態です。
悪化しないようにマッサージしたり、香りのよいお茶や野菜などをとるなどして、ストレスをためないようにしましょう。
痛みや熱がある場合は清熱しながら気血の巡りを良くする加味逍遙散を使います。
次に母乳の出が悪い。
母乳の出が悪い場合はもともと胃腸虚弱で体に栄養が足りないため、体の「気・血」不足が原因しています。
婦宝当帰膠・補中益気湯などを使って、気血を補いましょう。
三番目は、出すぎて赤ちゃんの吸い込みが間に合わず張って痛い。などがあります。
例えばビールに含まれる麦芽が母乳の分泌を抑制します。出すぎて困る方は搾乳のほかに、麦芽の入ったものを使うこともあります。
ポイント
・「気・血」の巡りを良くする
・香りのよいお茶、野菜などを多めにとる
・マッサージで予防
・気血の巡りを良くする漢方薬で症状をとる
・熱を持っている場合は清熱の作用のある漢方薬を使う
・母乳のコントロールには麦芽
上手に断乳・卒乳するには
育児も一年を過ぎる頃になるとそろそろ二人目を考える方も多いはず。
もし母乳を続けながら二人目を望んでいるとしたら、まず断乳をお勧めします。
母乳をあげている時期はプロラクチンというホルモンが高くなり、排卵を抑制するといわれています。
どうしても妊娠しにくくなりますので、1年くらいで断乳して体をととのえことが次の妊娠の備えとなります。
子供がどうしてもおっぱいを吸ってやめられないというお悩みもあります。
そんなときは炒った麦芽を飲むと、大体1か月ぐらいで母乳が止まりますので、お子さんもあきらめて難なく卒乳できます。
また、母乳が作られすぎて張りがひどく痛いのでなんとかして欲しいと言われ、炒った麦芽を使ったこともあります。
自然に母乳が作られなくなりますので、無理なく断乳・卒乳したい方にはお勧めです。