深刻な生理痛を克服した女性
女性にとって毎月やってくる生理。人によって軽い人もいれば重くて寝込んでしまうような方もいますね。
お腹をカイロで温めたり、鎮痛剤を使って痛みを止めるというのが一般的な方法でしょう。
この方も、10代の頃からずっとほぼ毎月鎮痛剤を使っていましたが、結婚し体をきちんと整えようと思われてれて来店された方です。
来店のきっかけは、ひどい生理痛に加えて、ストレスで生理がダラダラと続き排卵しなくなったことからでした。
少し時間はかかりましたが、地獄のような痛みと嘔吐から解放された方の例です。
目次
生理痛の原因を漢方的に解説
女性は毎月、低温期には卵胞が成長するとともに子宮内膜も徐々に厚くなり、卵胞が成熟すると排卵します。排卵の後はさらに内膜が増殖されて、妊娠が成立しないとその内膜が剥がれて出血します。これが生理です。
生理痛はこの内膜が剥がれるときに発生する痛みといわれています。
漢方的にはこの痛みは「瘀血(おけつ)」といわれるもので、血行不良です。特に腹部の血行不良が原因です。
生理痛がひどい人の経血は、色が暗紅色でレバー状の塊が混じることが多く、塊が排出された後は楽になる傾向があります。
ただ、瘀血だからといってワンパターンで改善できるわけではありません。
瘀血にも種類があるのです。
瘀血のタイプを症状別に分類
1.気虚タイプ
・元気不足が主です。
・疲れやすく声も小さめ。動悸や息切れがしやすいのも特徴です。
・食が細く、胃腸の弱い人が多いです。
・風邪をひきやすいこともあります。
2.気滞タイプ
・ストレスで気の巡りが悪い状態です。
・ため息が多く、イライラや気分の落ち込みなど、感情の起伏が激しいことがあります。
・生理前に胸が張りやすくなります。
3.血虚タイプ
・血液が不足していたり、貧血がある人です。
・顔色が白く、皮膚につやがありません。
・立ちくらみやめまいがあることがあります。
・髪がパサつきやすく、抜け毛が多いです。
・睡眠が浅く、不安を感じやすい傾向があります。
・生理の周期は遅れ気味で、月経血は少なめです。
4.陽虚タイプ
・手足の冷えが強く寒がりな体質です。
・元気も足りません。
5.陰虚タイプ
・体液が不足してほてりやのぼせすい体質です。
・口や喉が渇き、皮膚も乾燥しがちです。
・吹き出物が出やすいこともあります。
6.痰湿タイプ
・血液に脂肪や余分な水分が溜まっている体質です。
・食べたものの未消化物が時間をかけて粘々の状態となり、血液がドロドロの状態です。
症例の女性の症状は
生理痛のある方は軽症から重度の方まで様々ですがが、若い女性は圧倒的に血虚タイプが多いように感じます。
今まで私が受けた相談では、「血」を補う婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)をベースに血行不良を改善する冠元顆粒(かんげんかりゅう)や芎帰調血飲第一加減(きゅうきちょうけついんだいいちかげん)などを併用すると、子宮内膜症などの疾患があるなしにかかわらず、9割は改善しました。
残りの1割の方は、炎症があるなしにかかわらず、寝込むほどの月経困難症で、通常のやり方では改善しませんでした。
症例の女性は、残りの1割に入る方です。
多少の炎症傾向はあるのですが、内膜症ではありません。
顔色が青白く、時に立ちくらみがあり、生理前にイライラしたり胸が張ったりするという症状がありました。生理の周期は遅めです。
タイプとしては血虚と気滞が混じった瘀血です。
この方の生理痛はかなり強く、あまりに痛みが強くなると嘔吐し、嘔吐した後は少し楽になって徐々に普通レベルの生理痛になると言います。
痛みがピークの時には出血はそれほど多くはなく、痛みのピークが去った後のほうが出血量が増えるということでした。
出血にはレバー状の塊が混じり、少し痛みが治まったと思ったら、また痛み、最後の塊が排出された後に痛みから解放されるということです。
体質に合わせた漢方処方
この女性が来店した時は、生理痛だけでなくストレスからの不正出血と無排卵で、瘀血だけでなく完全にホルモンバランスが乱れた状態でした。
まずは定番の婦宝当帰膠と、血行不良を改善し、胃腸にも配慮しながら体を温め、痛みを抑える生薬で構成されている芎帰調血飲第一加減を処方しました。
服用して最初の月から排卵するようになったものの、3ヶ月服用も生理痛は全く変化なし。
半年後くらいから鎮痛剤を使用しなくなり、嘔吐しない月もありましたが、相変わらず強い生理痛に悩まされていました。
瘀血を改善するものをピクノジェノール製剤に変えたり、蛭(ひる)製剤を併用したり、田七人参を加えてみたりしてみましたが、思うほどの結果がでません。
この強い瘀血をどうやって取ろうと思った時に、下すことで瘀血をとる方法があったと気づき、「桃核承気湯(とうかくじょうきとう)」という下剤を使ってみることにしました。
基礎体温の高温期が下がったら、まだ出血していなくてもすぐに桃核承気湯(とうかくじょうきとう)を飲み始めてもらい、生理1日目と2日目のピークの時だけ使用してもらいました。
結果は良好で、多少の痛みはありましたが、寝込むことも嘔吐することもなく普通に過ごせたということです。下痢が心配でしたが、下痢することもなかったそうです。
その後は、「延胡索(えんごさく)」という止痛効果の高い生薬が多く入った折衝飲(せっしょういん)という漢方薬でコントロールできています。
まとめ
症例の女性は、子宮内膜症でこそないものの、日常生活に相当支障をきたす重度の月経困難症でした。
舌診をすると、舌の両側が黒ずんでおり、これはかなりの瘀血を意味していました。
長年の鎮痛剤の使用で、腹部の血流を抑えることとなり、どんどん瘀血が進んだ結果、普通なら効果のある漢方薬も長い間の古い瘀血を取り去るには力不足だったということです。
彼女は鎮痛剤を使えば、仕事も普通にできていたため、当初は自分の生理痛についてはそれほど重要視してはいませんでした。
将来的には妊娠を望んでいるということだったので、来店当初のホルモンバランスの崩れが解消した後に重度の生理痛に真剣に向き合うことになりました。
これほど重い生理痛の方はそんなに多くはないと思いますが、生理痛をごまかして長年いると将来の不妊につながります。
本来の女性の生理は痛みがないのがあたりまえなのです。
生理痛を悪化させないために
生理痛の原因である瘀血(おけつ)をつくらないことです。
悪化させないためには生活習慣を変えることが重要です。守ってほしい生活習慣とは
1.毎日必ず湯船に入る。シャワーですます人も多いので、浴槽に浸かって体を芯から温める
ようにしましょう。
2.甘い物は血液をドロドロにします。甘い物を食事の代わりにするのはやめましょう。
3.毎日良質のたんぱく質と新鮮な野菜をたっぷりとりましょう。
4.冷たい飲食物は控えましょう。
5.冬にスカートをはくときは、タイツやブーツで下半身を冷やさないようにしましょう。
6.ストレスが多いと感じたら、ストレスを回避することを模索しましょう。
7.鎮痛剤にばかり頼らず、体質を改善する漢方薬を服用しましょう。
漢方薬を使用するときは専門家に相談して服用しましょう。